酔いどれ男のさま酔い飲み歩記SP~「今はなき懐かしの名酒場」
ひとり旅にはお似合いの一人酒を、面白おかしいエピソードでつづる体験談エッセイ「酔いどれ男のさま酔い飲み歩記」。今回はスペシャル版を公開いたします。
はじめに
旅の思い出になるような酒場との出会い・・・それは一期一会の機会。今は無くなってしまった酒場も数多くある。そんな懐かしの名酒場を2つご紹介したい。
高知市の日本酒バー「MONK」(2004年2月)

夜の高知市一人酒で、口開けに郷土料理をいただいた私が次に向かったのは、マスターが一人で切り盛りする小さな日本酒バーだった・・・
高知に来たらどうしても食べてみたい料理があった。カツオの「塩たたき」である。醤油ベースでなく、塩だけで食べるたたき、どんな味がするのだろう。旅行情報誌を頼りに、塩たたきを出してくれるという店Bar「MONK」 を訪ねてみる。
バーなので遅い時間だと混んでいる可能性があると考え、少し早めに店を訪れた。案の定、一番乗り。マスターも、営業前のひと休みといった感じでカウンターのお客さん側に座っており、いきなり一見の客がやって来たので驚いたようすだった。
酒場で自己紹介も変だが、一応旅行者だとを告げ、まずは安田町の南をいただく。この店は日本酒メインのバーなのだ。続いて、お目当てのカツオの塩たたきを頼んでみたのだが・・・マスターの返事は「ないですよ」の一言。
曰く、今(2月)はカツオの旬ではないため、天然物は出回っていないとのことだ。正確に言うと、今食べられるのは冷凍物のマグロ。マスターは「冷凍は使いたくないのでね」と付け加えた。
マスターはもともと魚屋さんだったといい、魚に対する目利きやこだわりは本物だった。ならば、素人があれこれと注文するより、マスターにおまかせするほうがいい。
旬の食材から、グレ(メジナ)のたたき、マグロの刺身、さらに酒が進むたびに、クジラの赤身の刺身、のれそれ、サバの塩焼きと次々に出してもらう。旬の魚なので美味いに決まっているが、だんだん酔ってきて味が分からなくなってしまったが。
やがて、店に客が1人、また1人とやって来る。みんな顔なじみのご常連のようだ。一見客がよほど珍しかったのか、マスターは客が来るたびに「この方は信州から来られた」と紹介してくれる。なんだか主賓気分だな。
そのうちの1人である若い女性と会話が弾む。彼女は物事をズバズバと言うタイプのように見受けられた。これが土佐の女性、つまり「はちきん」なのかな。ちなみにマスターの方は、典型的な「いごっそう」とお見受けした。
みんな顔なじみなので、店はどんどんと賑やかになっていく一方。こういう店の常連だけあって、とにかく酒が大好きで「もっともっと飲んで」とせっついてくる。そのペースに引きずり込まれ、気が付いたらベロベロに酔わされてしまっていたのだった。
バー「MONK」の楽しい夜、ありがとう高知の皆さん。

バー「MONK」のマスターは若くしてお亡くなりになりました。ご常連の女性が引き継いだとも聞きましたが、結局長続きしなかったそうです😔
北海道網走市の居酒屋「底曳」(1997年9月)

知床半島観光の拠点として網走市内に1泊した。寿司屋で海の幸を堪能した私は、酒場を求めてさ迷い歩いていた。
それにしても鮨は美味かった。ボタンエビの頭やカニの内子と外子の握りは絶品である。腹は膨れたが、せっかく遠くまで来たのだから、もう1軒くらい寄るか。
居酒屋はあるが、定休日だったり、満席だったりでなかなか決まらない。でも、ぶらぶらしていれば何とかなるものだ。ちょっと小粋そうな居酒屋があるじゃないか。屋号は「底曳」と言うのか。これは底曳網からきているのかな。
店内には先客が2組。ちょうどいい塩梅だ。オヤジさんと女将さんのご夫婦で切り盛りしているらしい。早速日本酒を注文しよう。道東だから地酒は期待できないだろうから、冷酒ならなんでもいい。
注文を聞いた女将さんは「金杯生酒」という銘柄の一升瓶を持ってきた。グラスに注いで引っ込めるのかと思ったら、そのまま置いていくじゃないか。聞けば「どのくらい飲んだか、わかるからね」と笑う。つまり、おかわりはご自由にというわけだ。
酒が決まれば魚を頼もう。寿司屋で生の物はいただいたので、ここは焼き物といくか。何が美味いのかは店に尋ねるのが一番。オヤジさんに「一番美味しい焼き魚は何ですか」と声をかけてみた。
オヤジさんは「そりゃあ、キンキだよ」と即答する。が、すぐさま「・・・でも、これは簡単にはお勧めできないね」と言い切る。そのココロは単純明快「値段が高い」からだ。 いくらだったか覚えていないが、確かに高かった。
「それなら、安くて美味いのは無いの?」。私の聞き方も図々しい。するとオヤジさん「なら、サンマでも焼くか」と当意即妙な答え。サンマも道東を代表する秋の味覚である。しかも脂がたっぷりと乗っている。炭火でじっくり焼いているので余計に美味い。
サンマの焼き物と自家製イカの沖漬けは肴にピッタリで、一升瓶の日本酒もどんどんと進む。他のお客さんが帰り、残った客は私一人。ヒマになったオヤジさんと話し込む。
網走はもともと漁業で栄えたまちだが、漁業を取り巻く環境は年々厳しさを増しているそうだ。今では観光に活路を見出しているというが、これも一筋縄ではいかない。観光客は来るが、網走監獄とか見学して足早に次の観光地へ行ってしまうという。
「もっと網走ってまちを味わってもらいたいんだが」とオヤジさんは嘆く。私も足早に去っていく観光客の一人・・・
だが、今宵ばかりは腰を据えて、網走の夜酒を堪能しよう。

ご年配のご夫婦でしたので、店じまいをしたようです。その後、網走市に行く機会がありませんでしたので、再来訪できずに残念でした😓
★こちらのエッセイでは、閉店した大阪の激安名店「大万」をご紹介しています
関連記事

酔いどれ男のさま酔い飲み歩記㊶~「海軍のまち横須賀のディープ酒場で飲む」
ひとり旅にはお似合いの一人酒を、面白おかしいエピソードでつづる体験談エッセイ「酔 ...

ひとり旅で神社参り「東京多摩編」~大國魂神社、谷保天満宮、子安神社
八百万の神(やおよろずのかみ)が御座す神社をお参りし、大願成就やパワースポットの ...

酔いどれ男のさま酔い飲み歩記⑤~最北のまち稚内の贅沢な夜
ひとり旅にはお似合いの一人酒を、面白おかしいエピソードでつづる体験談エッセイ「酔 ...

あの町この味ひとり旅「富山ブラックラーメン~インパクトが強烈な個性派」
ひとり旅で出会った郷土料理、ご当地グルメ、美味しい食材など、エピソードを交えてご ...

旅道楽なエッセイ~なつかしの鉄道乗りある記「留萌本線」第3話
ひとり旅の思い出などを綴る旅道楽なエッセイとして、「なつかしの鉄道乗りある記」を ...









