旅道楽なコラムvol.2~ピンチを救ってくれた土佐清水の皆さん
ひとり旅のエピソード、失敗談、感動秘話などを綴る旅道楽なコラム。今回は、「ピンチを救ってくれた土佐清水の皆さん」のタイトルで、1994年10月のひとり旅でのアクシデントについて書きます。
カメラが潮だまりに落下
私は写真を撮るのが好きなので、ひとり旅の時は必ずカメラを持参し、旅先の景観や食べ物などを記念と「証拠」のために撮っています。
今と違って、昔はフィルムのカメラでしたので、パチパチと撮りまくるわけにはいきません。それでも、旅行後には大量のフィルムをプリントに出していたものです。
その場所に自分が写っていなければ、旅行した証拠になりません。そこで、持参したコンパクトカメラのセルフタイマーを使って、自撮りをしていました。
名勝「竜串・見残し」がある土佐清水市でのことです。奇岩が連続する岩場で、いつものようにセルフタイマーをセットして、写真を撮ろうと思ったのですが・・・
カメラの肩紐が引っ掛かってしまい、落としてしまったのです。最悪なことに、潮だまりに落下して水浸。海水ですので、ヤバイことこの上ありません。
カメラは異常な音を発して、ランプが点滅しっ放し。あわてて巻き戻しスイッチを入れましたが反応せず。やがて電池の部分が熱くなってきたので、急いで電池を外しました。
カメラが故障するのは仕方ないとしても、ここまで撮ってきた10数カットが台無しになるのは無念極まりません。どうにもならず、途方に暮れてしまったのです。
フィルムは助かった!
コンパクトカメラの代替えとして、お土産屋さんで使い捨てカメラを買い、そのついでに店のおじさんに事の顛末を話しました。誰かに愚痴を聞いてほしかったのです。
するとおじさんは「早く現像に出した方がいいですよ」と話すやいなや、店先の車のエンジンをかけ、私を近くの写真屋さんまで乗せてってくれたのです。
写真屋さんに到着し、ご主人に事情を説明すると、「今すぐ現像すれば、何とかなるかもしれない」と言い、カメラを持って暗室へと入っていきました。
数分後、暗室から出てきたご主人は「海水が多少かかっているけど、大丈夫そうだよ」と笑顔。私は、その場でプリント注文をさせてもらいました。
お土産屋さんと写真屋さんに助けられたことは、涙が出そうなほど嬉しかったのです。「フィルムがダメになっていてもいいや」と思ったほどです。
思わぬアクシデントで落ち込んでいましたが、土佐清水の方の人情に触れて、テンションは一気に回復。その後の旅がとても楽しかったことは言うまでもありません。
ちなみに、後日写真者さんから送られてきた写真には、水滴の跡がありました。それも、いい思い出の証拠です。代金の切手とともに、お礼状を添えさせていただきました。
私がひとり旅の心構えとして提唱している「不運やアクシデントは割り切ろう」という教訓は、この出来事がきっかけだったと思っています。
竜串・見残しは、竜串海域公園にある名勝地です。「見残し」という名前は、弘法大師が当地を訪れた際、行くのにはあまりにも険しい場所だったため、見残したことが由来だといいます。
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