酔いどれ男のさま酔い飲み歩記㉘~「甲府市の名物酒場をはしご酒・・・飲み過ぎた!」
ひとり旅にはお似合いの一人酒を、面白おかしいエピソードでつづる体験談エッセイ「酔いどれ男のさま酔い飲み歩記」。第28回「甲府市の名物酒場をはしご酒・・・飲み過ぎた!」のタイトルで、山梨県甲府市での飲み歩きを掲載します。
※飲み歩き当時を綴ったエッセイなので、お店の情報など現在と異なる場合があります
はじめに
中央本線が走っている山梨県には、ちょくちょく出かけている。とくに県庁所在地の甲府市は、特急あずさ号を使えば居住地から1時間で着く。長野県の県庁所在地・長野市よりも近いくらいだ。
旅行シーズンから外れる冬に訪れることが多いのだが、真夏の甲府市に一度出かけたことがある。観光もするが、飲み歩きがメインであることは言うまでもない。幸い、宿泊するホテルの真ん前に昔ながらの酒場がある。
それなら早速、出かけるとするか。
甲府市「どてやき下條」~甲府の呑んべえで知らなきゃモグリ
真夏の甲府行は初めてだったが、甲府駅から南の繁華街エリアに繰り出すのも10年ぶりとなる。夜の一杯はもちろん楽しみなのだが、今回は昼下がりの酒もいただこう。ホテルにチェックインし、真ん前にある酒場「どてやき下條」の暖簾をくぐる。
この店は午後3時の開店で、早くもご常連と思われるお客が数人いた。カウンター内を見ると、大鍋の前に親父さん。小瓶ビールを注文したが、小瓶は冬のみとのことで、代わりに生ビールのグラスを頼む。
すると、いきなり目の前にどてやき4串が・・・
しかも、注文した生ビールよりも先に出されたのである。これが下條の流儀なのだ。知らないとびっくりするだろうが、私は事前チェック済みなので驚かない。
生ビールも揃ったところで、どてやきをいただく。トロトロでとても美味い。どてやきと言えば、関西の酒場では鉄板メニューで、何を置いても一番に頼むべき「あて」だ。それを下條では、先制攻撃のごとく提供してくれるのである。
どてやきもいいが、箸休めになる付き出しのモヤシもいい。ビールを軽く飲み干すと、次は梅割りをいただく。断っておくが梅サワーではない。梅割りは、小ぶりのコップになみなみと注がれた甲類焼酎に梅エキスを入れて飲む東京スタイルの酒である。
大阪のどてやきと東京の梅割りの組み合わせ、いいぞ!
梅エキスを入れると言っても、焼酎をグイっと飲まなければ入らない。当然ながら、かなり強烈だ。そのせいもあってか「梅割りはコップ3杯まで」との決まりがある。ただ、3杯も飲んでしまったら、後が大変だ。
肴としてキャベツ炒めを追加する。ソースとコショウで味付けてあり、これまた呑んべえの心をくすぐってくれる逸品。チビリチビリと飲んでいても、さすがに酔いが回る。最初からあまり飛ばさないほうがいい。ほどほどにしておこう。
ちなみに、エッセイを書くために情報収集したところ、付き出しのどてやきは3本に変更されていた。酒飲みなら3本も4本もあまり変わらないな。
甲府市「甲州居酒屋さけくら」~ご当地グルメと気さくな大将
下條からいったんホテルに戻る。さすがに梅割りはキイた。夜の一杯には時間があるので、ここは酔い覚ましも兼ねて一眠りしよう。
少しだけ酔い覚めとなったところで夜の繁華街に繰り出す。週末なので満席の店が多いかと思いきや、思ったよりも人出は少ない。真夏は暑いので外飲みしないのだろうか。それはさておき、良さげな店「甲州居酒屋さけくら」を訪れる。
屋号を見て昔ながらの店かなと思いきや、店内は比較的新しめ。せっかく甲府市に来たのだから地酒をいただく。それならば「春鶯囀」がいいだろう。この酒のラベル、初めてだとまず読めない。「しゅんてんのう」と読むのだ。
山梨県富士川町の萬屋醸造店が造る春鶯囀は、山梨では有名な地酒の一つ。どんな肴にも合いそうな酒だが、せっかくの甲府なのだから、ここは名物グルメをいただこう。
甲府といえば「鳥もつ」だ。
甲府の鳥もつは、B級グルメグランプリで一躍メジャーになった。 ただ、隣接県民の私には昔から馴染みのある料理。鳥の内臓のさまざまな部分をぶつ切りにし、甘辛いたれで煮込んだシンプルな味覚だ。
以前、甲府で飲んだ時、「内臓料理だから、下ごしらえで手を抜くと、似て非なるものが出てくるよ」と聞いたことがある。さけくらの鳥もつはどうか・・・正真正銘、美味しい鳥もつで安心した。
店の大将はかなり気さくな方で、一見の私にも気安く声を掛けてくれる。そればかりか、サービスでイワタケやスペアリブまで出してくれた。それにつられて、ハイサワー、さらに春鶯囀までおかわり。やや飲み過ぎて、すっかりご機嫌になっちゃったな。
甲府市「くさ笛」~カンを頼りに探し当てた名店
酔ってはいるが、もう一軒どうしても寄りたい酒場がある。酒場探訪ではおなじみの太田和彦、吉田類の両氏が訪れた数少ない酒場の一つが甲府市にあるのだ。その店の名は「くさ笛」 である。
ただし、この店の存在は太田さんや類さんの番組で紹介されるより、ずっと以前から私は知っていた。それは約10年前にさかのぼる。ほろ酔いで繁華街をさ迷い歩いていた私の目の前に、立派な縄のれんの小粋そうな店が現れた。それが「くさ笛」だった。
予備知識がまったくなかったが、一目で「この店はイケる」と判断して立ち寄ってみた。私のカンはズバリ的中した。女将さんほか2人で切り盛りしている小さな店。雰囲気は抜群で、一見の私もあっという間に馴染んでしまったのだ。
あれから10年、女将さんは健在だった。
カウンターの一角に陣取り、ビールとヤマメの塩焼きを注文したと同時に、一気に酔いが回ってきてしまったのだ。やはり、昼の梅割り、さけくらの飲み過ぎがたたっていた。だが、薄れがちな記憶のなかにも、居心地のいい雰囲気だけは感じていたのだった。
女将さん、スミマセンでした。次は酔う前にお店に来ます。
(2013年8月忘備録)
エッセイでご紹介した店舗(食べログページにリンク)
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