旅道楽なエッセイ~なつかしの鉄道乗りある記「留萌本線」第2話

ひとり旅の思い出などを綴る旅道楽なエッセイとして、「なつかしの鉄道乗りある記」を連載します。今は廃線となってしまった地方ローカル線や第三セクター路線の乗車体験記で、今回は北海道留萌市を中心としたローカル線「留萌本線」第2話をご案内いたします。

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「留萌本線」第2話

NHK連続テレビ小説の舞台となった恵比島駅

次は秩父別駅。こちらもなかなか堂々たる木造の駅舎がそびえたっている。深川から乗車した客の半分ほどがこの駅で下車したので、ターミナル駅のひとつになっているようだ。読み名の「ちっぷべつ」もなかなか読める人はいないであろう。

このあたり、田園風景とところどころに民家が点在するというごく平凡な風景が延々と続く。そのはるか向こうには山が見えるが、稜線はなだらかでいかにも北海道らしさがある。

しかし、最も高いと思われる山の頂上付近にはいまだに雪が残っているのには驚いた。北海道ということだけでなく、とりわけ積雪の量が多い地域ならではの光景だろう。

窓が全開状態のため、車内の案内放送はまったく聞こえない。実はこの秩父別の次の北秩父別駅は通過したのであるが、その事前確認ができなかったため、何気なく車窓を眺めていて急に駅名板が通り過ぎていったのに驚いた。

北秩父別は田んぼの真ん中にあるような小さな駅で、かつての仮乗降場。留萌本線は各駅停車しか運転していないが、このように通過してしまう駅も存在する。

 

北秩父別を通過した次の駅は石狩沼田。ここもターミナル駅のひとつで、かつては札沼線の終点として札幌までレールがつながっていた。しかし、石狩沼田―新十津川が廃線となってしまったため、札沼線は新十津川という何とも中途半端な終着駅を持つ路線になった。

札沼線もかつて乗ったことがあるが、こちらはほとんど田園のど真ん中を走るローカル線で、終端部は一日3往復しか走っていない超閑散路線である。

それはさておき、石狩沼田からの乗降客は1人もなく、列車は次へと向かう。これまた田園の真ん中にある小さな駅の真布である。こちらは物置にしか見えないような待合室と木製のホームだけという簡素な駅で、やはり仮乗降場だったところであろう。

 

真布を過ぎると田園風景からは徐々に別れを告げ、だんだんと里山へ入っていく。その入り口にあたる駅が恵比島である。こちらは木製のやや新しい駅舎があるのだが、駅舎に掛かっている看板には「明日萌駅」と記されている。

知らない人が見ると「どっちが正しい駅名なんだ?」と首を傾げるだろう。実はこの駅は、NHK連続テレビ小説「すずらん」の舞台になったのである。

その時の架空の駅名が明日萌だったのだ。番組を見ていないのでどういう話かは知らないが、事前情報を得ていたのですんなりと理解することができた。

ロケのためにつくった駅舎をそのまま残して使っているというのだから、テレビの効果は絶大である。周囲も里山のなかにあって雰囲気はなかなかいい。(つづく)

 

留萌本線とは

深川から留萌を経て増毛まで結ぶ路線。本線とは名ばかりで、廃止直前の頃は特急や急行は運行しておらず、ローカル色たっぷりの路線。終点増毛駅は映画の舞台にもなった終着駅らしい駅として人気があった。

赤字路線だったため廃線が取りざたされていたが、2016年12月に留萌―増毛、2023年3月末に石狩沼田―留萌と段階的に廃止された。2026年3月末には、残る深川―石狩沼田の廃止も決まっており、これによって全線廃止となる予定だ。

※このエッセイは、過去にホームページで掲載した「鉄道乗車レポート」をリメイクしたもので、マイケルオズのnote及びブログ「旅人マイケルオズのニッポンひとり旅語り」でも掲載しています

 

廃線巡りはレンタカーでどうぞ
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