旅道楽なコラムvol.9~あの時乗っておけばよかった?廃線直前の深名線
ひとり旅のエピソード、失敗談、感動秘話などを綴る旅道楽なコラム。今回は、「あの時乗っておけばよかった?廃線直前の深名線」のタイトルで、1995年8月、北海道深川駅での思い出を書きます。
旅行の10日後が深名線廃線の日
昭和の終わりから平成初めにかけて、JR(旧国鉄)の地方を走る赤字ローカル線が次々に廃線となっていきました。
とくに北海道は多くの赤字線を抱えており、次から次へと鉄路が消えていったのですが、超赤字線にもかかわらず、存続し続けていた路線があったのです。
北海道中央部の深川駅と名寄駅を結ぶ深名線です。この路線は、代替えとなる道路が未整備だったという理由から辛うじて生き残ってきました。
その深名線がいよいよ廃線となる1995年夏、北海道稚内を目指したひとり旅をしました。当時は深名線ではなく、最北端の稚内駅に関心が向いていたのです。
深名線の廃止日が10日後と知ったのは旅行直前でした。最後のチャンスに乗ってみようかと考えたのですが、そう簡単ではありません。
深名線を乗り通すためには、始発の深川駅を早朝出発しなければなりません。その前日は旭川に泊まる予定ですが、どんなに早起きしても深名線には乗れないのです。
今でしたら、宿泊予約サイトで深川市のホテルを探して、簡単に取り直すことも可能でしょうが、当時は宿泊予約の変更は容易ではありませんでした。
深川駅で深名線グッズを購入
深名線に乗れるもう一つの方法は、旭川駅から名寄駅まで行き、ここで深名線の朱鞠内行に乗り、朱鞠内駅で折り返して名寄に戻って来るというパターンです。
後で知ったのですが、名寄―朱鞠内は無人地帯である深い山間部を走っており、深名線に乗るならここは外せないという絶好のルートだったのです。
少し悩みましたが、結論として導いたのは「予定通り旭川駅から急行で稚内方面に向かう」ことでした。プランを大幅に変える「深名線さよなら乗車」は断念したのです。
そして旅行当日、札幌駅から特急に乗った私は旭川の手前、深川駅で途中下車しました。深名線の始発駅を見ておきたいと考えたのです。
深川駅では「思い出の深名線」というオレンジカードを販売していたので1枚購入しました。乗れないのであれば、せめてもの記念にと思ったわけです。
すると駅員さんから来駅証明書だけでなく、「せっかくだから記念にどうぞ」と乗ってもいないのに、深名線の乗車証明書までいただきました。
あれから深名線の思い出グッズを眺めるたびに「あの時、乗っておけばよかった」との思いが増していきました。二度と戻ることができない苦い思い出でもあります。
この時の経験をきっかけに、廃線間近のローカル線へ積極的に乗りに行くようになりました。北海道では「ちほく高原鉄道」の乗り通し旅も企画したほどです😀
深名線のハイライトとも言われた朱鞠内湖をグルリと回るルート。冬は豪雪に閉ざされてしまう朱鞠内湖ですが、シーズンはフィッシングやキャンプでにぎわっています。
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