旅道楽なエッセイ~なつかしの鉄道乗りある記「留萌本線」第3話

ひとり旅の思い出などを綴る旅道楽なエッセイとして、「なつかしの鉄道乗りある記」を連載します。今は廃線となってしまった地方ローカル線や第三セクター路線の乗車体験記で、今回は北海道留萌市を中心としたローカル線「留萌本線」第3話をご案内いたします。

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「留萌本線」第3話

幌糠駅

ここからはひたすら原生林のなかを突っ走っていく。いよいよサミットを迎えようといったところであるが、とくに極端な峠越えという感じではなく、少しずつ山間をのぼっている。

それでも原生林はどんどんと深くなり、鉄道がなければ人跡未踏の場所が続いていくことになる。トンネルも2ヵ所ほどあり、まさしく山越えの路線といったところ。駅間ももっとも長くなっている。

 

サミットを越えて少し下ったところにあるのが峠下駅。左側の車窓からは民家の姿は見られず、山深い無人駅といった印象である。

駅舎には人がいたので、山の中でも乗降客があるんだなあと思っていたのだが、その人たちは列車が来てもおかまいなしのようすだった。よく見ると駅舎の先にはトラックが停車しており、単にドライバーが駅舎内で休憩を取っていただけであった。

ちなみにこの峠下駅は、深川―留萌で唯一の列車交換施設を残している。無人駅だけに、実際に施設を運用しているかどうかは定かではない。

 

深い山の真っただ中は過ぎたが、しばらくの間、里山や原生林のなかを走っていく。峠下の次は幌糠となっているが、つい6年ほど前までは東幌糠という駅があった。これは事前情報を持っていなかったので、駅の跡を探すことすらできなかったのは残念だった。

帰ってから調べてみると、やはり仮乗降場から格上げとなった駅のようで、一日2往復しか列車が停車しないという、列車で訪れるのが極めて困難というところだった。

駅が廃止になったのは、宗谷本線の南下沼や札沼線の中徳富などと同じころで、板敷きのホームのみの駅だったため、今は跡形もなくなっているとのことだ。廃駅は仕方ないにしても、せめてかつて駅があったことをしのばせるような看板の一本ぐらい立ててあってもいいのではないかと、鉄道好きの私は勝手に思う。

 

幌糠駅は里山のなかでも比較的民家の多いところにある。この幌糠集落から高規格道路の深川留萌自動車道がスタートしている。今は全線開通していないせいか、深川西までは無料で通行することができる。

幌糠から先も留萌に向かって工事が刻々と進んでいるように見受けられた。いずれ開通するのだろうが、果たしてどのくらいの交通量が見込めるかはいささか疑問ではある。インフラ整備のためにはやむを得ない投資なのだろうが、この道路の開通が留萌本線の首を絞めてしまうことを危惧せずにはいられない。

列車は同じような里山と原生林のなかを行く。途中で留萌川と何度も交差する。北海道の川は形成年代が比較的新しいため、河原がないものが多く、留萌川もそんな感じに見受けられた。(つづく)

留萌本線とは

深川から留萌を経て増毛まで結ぶ路線。本線とは名ばかりで、廃止直前の頃は特急や急行は運行しておらず、ローカル色たっぷりの路線。終点増毛駅は映画の舞台にもなった終着駅らしい駅として人気があった。

赤字路線だったため廃線が取りざたされていたが、2016年12月に留萌―増毛、2023年3月末に石狩沼田―留萌と段階的に廃止された。2026年3月末には、残る深川―石狩沼田の廃止も決まっており、これによって全線廃止となる予定だ。

※このエッセイは、過去にホームページで掲載した「鉄道乗車レポート」をリメイクしたもので、マイケルオズのnote及びブログ「旅人マイケルオズのニッポンひとり旅語り」でも掲載しています

 

廃線巡りはレンタカーでどうぞ
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