酔いどれ男のさま酔い飲み歩記㉓~「大阪の串カツの名店とダークダックス状態の店」
ひとり旅にはお似合いの一人酒を、面白おかしいエピソードでつづる体験談エッセイ「酔いどれ男のさま酔い飲み歩記」。第23回「大阪の串カツの名店とダークダックス状態の店」のタイトルで、大阪市飲み歩きでの愉快な思い出を掲載します。
※飲み歩き当時を綴ったエッセイなので、お店の情報など現在と異なる場合があります
はじめに
今回は第22回のつづき。1日目の昼酒はなかなか楽しかった。電車で酒場に通う爺さま、「ものまね」のオヤジ、串カツ1本だけ食べて立ち去るおっちゃん、そして大万の歴史を知るご常連・・・個性的な人たちばかりだったな。
飲み歩きとは直接関係ないが、今回の大阪行きではホテルの確保にどえらい苦労をした。理由は明白。ちょうど大阪府知事&大阪市長のダブル選挙とバッティングし、市内のホテルはすべて満室。幸い、堺市に宿が確保できて助かった。
ホテルのシャワーでアルコールを抜き、夜のまちに繰り出すとするか。
花園町「ひげ勝」~串カツの美味い店の行列
夜は堺市内で飲もうと思っていた。だが、もともと今回の一人酒は大阪市が目的地だった。堺市内では塩梅がよくないというわけではないが、結局大阪市内へと向かってしまう。南海電車に乗り、降りたのはおなじみの萩ノ茶屋駅。
あいりん地区での夜飲みは、さすがにコワい。なら、どうして萩ノ茶屋駅で降りたのか。それは、あいりん地区と反対側(西側)の花園町にお目当ての店があるからだ。店の名は「ひげ勝」。大阪では知る人ぞ知る串カツの美味い店である。
住宅街に行列・・・これはもしや・・・
案の定、ひげ勝の前で数人並んでいた。いつもなら「並んでまで飲みたくない」とケツを割るところだが、そうはいかない。どうしても、ひげ勝の串カツが食いたかった。それと、周囲は住宅街で他に入れそうな店もない。
30分待ってようやく入店。カウンターの一角に陣取る。この店は、最初の注文は伝票にしるしを付けて店員に渡すという方法を取っている。生ビールは当然として、肴は串カツ、レンコン、タマネギ、ギンナン、キス、アンペイに印を付けた。
アンペイって、いったい何だろう?
分からないのに注文する方もする方だ。後でハンペンだと分かって納得する。ところで、評判の串カツであるが、これは掛け値なしに美味い。カラリと揚がっているので、いくつでも食べられる。行列ができるのもうなづけるぞ。
これはしっかり食べておこう。麦焼酎を追加し、タイミングを見計らって注文を入れる。シイタケ、アスパラ、青唐辛子、トリモツ、ゲソ・・・どれも美味い。店内の雰囲気も最高。お客はほぼ地元の方ばかり。まさしく穴場の名店や。
新今宮から大阪環状線で京橋へ~すんなりとはいかない
さて、話は翌日の昼酒へと飛ぶ。昨夜、萩ノ茶屋駅に降りたのに、あいりん地区に寄れなかった。これはリベンジしなければと、堺東駅から南海電車に乗る。が、各駅停車に乗ったのに、萩之茶屋は通過してしまう。 なんてこったい!
新今宮駅まで来てしまった。ここから戻るのも面倒くさい。昼の一人酒を始める時間はとっくに過ぎている。なら、新今宮で口開けとするか。ガード下の立ち飲み「岩田屋酒店」に飛び込む。
この店は、醜態をさらした飲み歩き(第11回「あいりん地区飲み歩き。最後はヘベレケ」)以来の来店となる。あの時と同じく、昼酒独特のダルな雰囲気は変わらない。ならば、こちらも日本酒とカツオのたたき、小松菜と油揚げの煮付けを頼み、ゆるゆると過ごす。
岩田屋を出て、そのまま界隈では飲まず、新今宮駅に戻る。大阪環状線に乗って、京橋に繰り出すとする。環状線なのに途中の天王寺駅止まり。ぶつくさつぶやきながら乗り換える。今度こそ、すんなり京橋に向かうと思ったのだが・・・
京橋駅目前で電車が急停車してしまう!
停止信号で止まったと思っていたら、「大阪駅で人が転落したので緊急停車します」とのアナウンス。おいおい、ここで足止めはないぞ。転落した人の心配より、一人酒の心配をする私の浅ましさ。幸い、すぐに発車し、京橋駅に滑り込んだ。ヤレヤレ。
京橋「岡室酒店直売所」~個性派マスターと笑いの飛び交う店
京橋の立ち飲み激戦区に入り込み、最初の1軒で軽く飲んだところで、京橋のメインを目指す。界隈で最もにぎわっている立ち飲み「岡室酒店直売所」へ突撃だ。
外から見ると、とても入れそうにない満席状態に見える。が、この店は大丈夫。これ以上はムリ、と思っていても、店員が声掛けをし、客同士が詰め合って席を空ける。そうやって私も滑り込めた。
小ビールとアンキモ、フグの唐揚げを注文。早速飲み始める。この店はマスターが個性的なキャラクターで、独特な店の雰囲気を作り上げている。店員も底抜けに明るい。それに輪をかけて、酔客のご常連はご陽気な方々ばかり。
店内は常に笑いが絶えないのだ。
この手の店にはあまりいないタイプの若いカップルが来店する。私の横にムリして席を空ける。客はカウンターに真っすぐ立たず、斜め横向きに立つことになる。カップルの女性が「これがダークダックス状態なんだぁ」と妙に感激していた。
カップルの隣のおっちゃんは、しきりにカップルに声を掛けながら、英単語を交えたくだらないダジャレを飛ばし、カップルにウケている。それを聞いて私も笑う。小ビールはすぐになくなり、追加でチューハイを頼む。まだまだ居座るぞ。
カップルの注文につられて、紅ショウガの天ぷらを頼み、さらに生ぎも(生レバー)を注文。焼き肉店で起きた食中毒事件以来、生レバーの提供を自粛する店が増えていたが、ここではまだ食べられる。大丈夫だよね?
(※注 当時は禁止前でした)
相変わらずおっちゃんのダジャレは冴えわたる。マスターとご常連の掛け合い漫才のような会話が聞こえる。店員のおばちゃんは元気よく注文を受けている。そして、また笑い声が飛び交う。
岡室、いい店だ。また来よう、何度でも来よう。
(2011年11月忘備録)
エッセイでご紹介した店舗(食べログページにリンク)
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